鍼灸マッサージ院 元!

人は、不調に理由を求める

原因探しに疲れたとき、もう一度立ち返りたいこと

今回は、「不調の理由」について考えていることを書いてみたいと思います。

身体が痛い。
眠れない。
鎮痛薬を持ち歩く。
一日に何度も薬を飲む日がある。

もちろん、そのような状態が続けば、一度は医療機関を受診される方が多いと思います。
強い痛みや長く続く不調、薬の使用が増えている状態では、まず医療機関で確認することが大切です。

けれど、検査では大きな異常が見つからない。
あるいは、慢性的なものとして付き合っていく必要がある。

健康だった頃には想像もしなかったような体調や気分、生活の中に、いつの間にか入り込んでいる。

それは、人によっては少し恥ずかしいことのように感じるかもしれません。
弱くなったと思われるのではないか。
自分はもっと強くいられるはずだったのではないか。
そう思ってしまうこともあるかもしれません。

今まで普通にできていたことが、普通ではなくなっていく。
「ふつう」の生活から少しずつ離れて、自分だけが取り残されていくように感じる。

そういう現実の中で、痛みがあるから眠れないのか、眠れていないから痛みが強くなるのか。
ストレスなのか。
疲労なのか。
姿勢なのか。
自律神経なのか。

頭の中で、あれこれ堂々巡りしてしまうことがあります。

これは、とてもつらいことです。

そういう状態が続くと、人は原因を探します。

「何が悪いんだろう」
「どこから崩れたんだろう」
「何を直せばいいんだろう」

時には、追い詰められるように原因を探してしまうこともあるかもしれません。

でも、それはおかしなことではないと思います。

自分の身体で起きていることがわからない。
痛い。
眠れない。
生活が崩れていく。
今まで普通にできていたことが、普通ではなくなっていく。

その中で理由を知りたくなるのは、とても自然なことです。
鍼灸師に話をぶつけたくなる気持ちも、よくわかります。

ただ、不調が長く続いてくると、原因探しそのものに疲れてしまうことがあります。

身体が痛い。
眠れない。
眠れないから、さらに疲れる。
疲れるから、また痛みが強くなる。
薬でなんとか一日をつなぐ。
でも、それで根本的に良くなっているのかはわからない。

そうなってくると、話はどんどん複雑になります。

最初は「だるい」とか「痛い」だったものが、
睡眠、気分、仕事、生活、薬、天気、ストレス、過去の疲れ、身体の緊張。
いくつもの要素が絡み合って、自分でも何が何だかわからなくなってくる。

これは、特別おかしなことではありません。
むしろ、長く不調を抱えている人にとっては、とても自然なことだと思います。

そして、原因を探し続けてしまう方の中には、とても責任感の強い方が多いようにも感じます。

自分の生活が悪かったのではないか。
もっと早く気づけばよかったのではないか。
何かを間違えたから、今こうなっているのではないか。
ちゃんと原因を見つけて、ちゃんと直さなければいけないのではないか。

そうやって、自分の身体に対しても、どこか真面目に責任を取ろうとしてしまう。

もちろん、自分の身体を知ろうとすることは大切です。
生活を見直すことも、必要な場面があります。

けれど、答えの見えづらい原因を追い求め続けることは、それ自体がまた疲労になることがあります。

調べる。
考える。
比べる。
試す。
うまくいかない。
また原因を探す。

その繰り返しの中で、本来は自分を守るための責任感が、いつの間にか自分を責める方向に向いてしまうことがある。

「ちゃんとしなければ」
「早く良くならなければ」
「原因を見つけなければ」

その思いが強い人ほど、気づかないうちに自分を追い込んでしまうことがあります。

だから、不調の原因を考えるときには、
「自分のせいにしすぎていないか」
という視点も、少しだけ持っていていいのではないかと思います。

東洋医学では、原因を無視するわけではありません。

ただ、病名や原因をひとつに絞ることだけではなく、
「今この身体がどういう状態にあるのか」
「どちらへ整えていくのか」
を見立てる考え方があります。

東洋医学には「証」という考え方があります。
これは、病名だけではなく、その時点での心身全体の状態を見ていくものです。

同じような症状でも、身体の冷え方、張り方、疲れ方、眠りの状態、胃腸の様子、緊張の抜けなさなどによって、見立てや施術の方向が変わることがあります。

つまり、
「原因はこれです」とひとつに決めつけるよりも、
「今の身体はどういう方向に傾いているのか」
「まず何が少し楽になると、この人の日常が戻りやすいのか」
を見ていく。

少なくとも当院では、そのように考えています。

そこで一度、立ち返ってもいいのではないかと思うことがあります。

「原因は何か」より前に、
自分は本当はどうしたいのか。

ただ原因を知りたいだけなのか。
それとも、もう少し眠れるようになりたいのか。
朝、少し楽に起きたいのか。
仕事を続けたいのか。
家族や大切な人との時間を、もう少し穏やかに過ごしたいのか。
痛みに支配される時間を、少しでも減らしたいのか。

そこに立ち返ることは、意外と大切だと思っています。

ニーチェに、
「生きる理由を持つ者は、ほとんどどのような生き方にも耐えることができる」
という言葉があります。

少し大きな言葉ですが、不調と向き合うときにも通じるものがあるように思います。

人は、本当に何も望んでいなかったら、
そもそも理由を探さないのかもしれません。

なぜ痛いのかを知りたい。
なぜ眠れないのかを知りたい。
なぜこんなに疲れているのかを知りたい。
どうしたら少し楽になるのかを知りたい。

それは単に、原因を突き止めたいというだけではなく、
「このままではいたくない」という気持ちのあらわれでもあるのだと思います。

痛みがなくなってほしい。
眠れるようになりたい。
朝をもう少し楽に迎えたい。
仕事や生活を、もう少し普通に続けたい。
大切な人との時間を、痛みや疲れだけで終わらせたくない。

そう考えると、理由を知りたいという気持ちは、
まだ生きたい、まだ良くなりたい、まだ何かを取り戻したいという、遠回しな叫びなのかもしれません。

この言葉は、少し重く聞こえるかもしれません。

けれど、長く不調を抱えていると、身体の痛みだけではなく、生活そのものが削られていきます。
眠れない。
出かけられない。
仕事に集中できない。
人に優しくする余裕がなくなる。
好きだったものにも手が伸びなくなる。

そういう時間が続くと、ただ「肩が痛い」「腰が痛い」という話ではなくなっていきます。

身体の不調は、単純な部品の故障のようには扱えないことがあります。

そこには、その人が過ごしてきた時間があります。
忙しさの波。
年齢とともに変わっていく回復力。
少しずつ積み重なってきた疲労。
眠れない夜。
気を張り続けてきた日々。
我慢してきた痛み。
言葉にしきれない緊張。

そうしたものが重なり、ある時期からほどけにくくなる。
気づけば、痛みが眠りを妨げ、眠れなさがまた痛みを強くし、疲労がさらに身体をこわばらせていく。

だからこそ、理由を探してしまう。
どうしてこうなったのかを知りたくなる。
どこを直せば戻れるのかを考えてしまう。

その奥には、たぶん、諦めきれないものがあります。

本当はもう少し楽に暮らしたい。
本当はもう少し眠りたい。
本当はもう少し、普通に一日を過ごしたい。
本当はまだ、自分の時間を取り戻したい。

原因探しに疲れたときほど、
「何が悪いのか」だけではなく、
「自分はどうなりたいのか」に立ち返ってみてもいいのだと思います。

もちろん、原因を考えることが悪いわけではありません。

身体の不調には、確認すべきことがあります。
強い痛み、長く続く痛み、急な変化、薬の使用が増えている状態などは、医療機関での確認が必要な場合もあります。

ただ、原因をひとつに決めつければ、それですべてが解決するとは限りません。

身体は、思っているよりも複雑です。

だから当院では、最初から原因をひとつに決めつけるのではなく、
実際にお身体に触れながら、今どのような反応が出ているのかを見ていきます。

筋肉の張り。
冷え。
呼吸の浅さ。
左右差。
押したときの感覚。
力が抜けにくい場所。
触れたときに、少しゆるむ場所。

そうした反応を確認しながら、その日の状態に合わせて施術を組み立てていきます。

大切なのは、原因を言い当てることだけではないと思っています。

今日、少し楽になること。
呼吸が少し深くなること。
眠りやすくなること。
首や肩の力が少し抜けること。
痛みに向いていた意識が、少しだけ外の世界に戻ること。

そういう小さな変化を積み重ねることも、身体を整えるうえでは大切な道筋です。

不調が続くと、原因を探すことに疲れてしまうことがあります。

でも、理由を知りたいと思うこと自体が、
本当は「少しでも良くなりたい」という気持ちのあらわれなのかもしれません。

原因探しに疲れたときは、
いったんそこに立ち返ってもいいと思います。

自分は、どうなりたいのか。
どんな時間を取り戻したいのか。
何が少し楽になれば、今日を生きやすくなるのか。

当院では、そうしたことも含めて、
身体の反応を見ながら、無理のない形で整えていきます。

はっきりした原因はわからないけれど、なんとなく調子が悪い。
痛みや疲れが続いていて、どう考えたらいいかわからない。
自律神経の乱れと言われたけれど、何をしたらいいかわからない。

そんなときも、お気軽にご相談ください。

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